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軽油の豆知識:

軽油はガソリンより安い燃料?

 ガソリンと同様に軽油は何処でも買えます。 そしてガソリンよりずっと安いって思っていませんか?確かにガソリンスタンドで販売されている価格には大きな差があります。しかし税金はリッターあたりガソリン¥53.8、軽油税:¥32.1でなんと22円近くの差があります。実際にはガソリンの税金には消費税が加算されもっと価格差は大きくなっています。(実際の税金格差はもっと複雑です。)しかし、海外に行かれた方は、ガソリンと軽油の価格差が殆ど無い事に気が付いている方も多いのではないでしょうか?ガソリンも軽油も原油を精製して作るものなので大まかに言えば作るコストはさほど違いがありません。ではなんで軽油の税金は安くなっているのか?それは政治家の道具に使われていると言っても過言ではありません。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの環境負荷

東京都知事の無能な発言で、ディーゼルエンジンは汚い・大気汚染の元凶であるかのごとく思われています。しかし、ヨーロッパに旅行された方は、タクシー・乗用車の多くがディーゼル車であることに気が付かれたのではないでしょうか?そう、ディーゼルエンジン車は、本来ガソリン車よりずっと環境にやさしいのです。昨年ヨーロッパで、軽油添加剤の予備テストを約1800km行った際使用した、Opel/Astraワゴン1.7リッターターボは、一般道30%高速60%の走行でなんとリッターあたり17Kmを上回る好成績を収めています。 しかも高速道路の平均速度は140km/h最高速175km/hでのハイスピードツーリングと一般道は、アップダウンの峠道をかなりスポーティーに運転しています。もし国産ガソリンエンジンターボ車を使用していたら、燃費は7Km/L台に乗るか乗らないか程度でしょう。 さらに、どんなアクセルワークに対しても黒鉛の排出はありませんでした。つまりきっちりとした統合的対策がなされていれば黒鉛の排出は殆ど無く、同時にCO2の排出はガソリンエンジンより何割も削減できる能力を有しています。フランスでは乗用車の約7割弱がディーゼル車・ヨーロッパ全体でも半数近くがディーゼル車になっていることでもディーゼル車が認知されている証でしょう。
 これに対し東京都条例に従い排気ガス対策をしてあるとバスやトラックの中には未だ黒鉛をかなり排出している車があります。きちんと対応を取ったにもかかわらずおかしいと思いませんか?前記の軽油の税金が安い事とまったく理由は同じです。そもそも軽油の税金が安いのは、物流業者の負担を少なくすることででした。物流コストは全ての産業のコストに影響する為政治的に安くしているのです。ガソリンは一般庶民が利用する贅沢品だし、上げても文句は出ないと言う発想です。25年前はそれも仕方の無い事とはいえ、この租税特別措置法という一時的な増税は25年以上にわたり続いているのは変な話です。本来ガソリンの税金は約半分の28円にすぎないのです。弱い庶民は、無視されていると言っても現在では過言ではないでしょう。これに対し、最近政治は庶民の顔色をう傾向があり、企業も環境を無視した対応は取れない時期に、都知事はそれを1つの材料として中途半端な条例を発して排気ガス減少装置の取り付けを義務つけました。しかし、この条例は認可した装置を取り付けさえすれば良く、その数値に関しては何ら制限はありません。絶対量が減った事は確かかもしれません。しかし、これは目に見える部分(特に黒鉛等の粒子状物質)であって、ディーゼルエンジン本来の排出物質NOxの低減に寄与していません。あくまで人気取りの材料に使われ、一部の企業(輸送業やトラック等を使用する個人業者)に負担を押し付けたとしか思えない中途半端な条例です。カーメーカーは全て本当のことを理解していますが、この条例施行に伴い新車販売が増えるので黙っています。下手に反発すれば、環境を無視していると勘違いされるより得だとの判断と言われても仕方がないと思います。経営者としては、このような態度は失格でしょう。 それではどうしたら、有毒排気ガスを減らし、ディーゼル車の実力が発揮できるようになるのでしょうか?

軽油の低硫黄化

軽油中には硫黄分が含まれており、この硫黄分はエンジン設計に多くの制限を設けてきていました。ピストンリングには、燃焼した硫黄から硫酸等が生成されるため磨耗と腐食を防ぐクロームメッキを施工したり、ガソリン車のように触媒を取り付けても直ぐに劣化してしまう為、取り付けることが出来ませんでした。同時に酸性雨と粒子状物質の主な原因になっています。軽油の低硫黄化は高度な技術とコストがかかる為、欧州に比較し数年遅れていました。これも政治的要因があると思われます。しかし、この数年の間に、5000ppm(0.5%)→2000ppm(0.2%)→500ppm(0.05%)→50ppm(0.005%)と段階的に低減されてきています。最近S 50と言うマークを目にした方も居られると思います。これは50ppm以下まで硫黄を減らした低硫黄軽油の事です。昨年までは500ppmあった硫黄が50ppmになることで粒子状物質は5〜10%減少します。石油元売は今年の出荷分からは50ppm以下にしスタンドでの販売も2004年末には全て50ppm以下になります。この軽油が販売されることにより、排気ガス対策もしやすくなるわけです。東京都の条例も、まず東京都内のスタンドではこのS50の販売を義務付ける事や排気ガス排出量をはっきり設定し、施行する事は出来たはず。また乗合バスは除くなど中途半端な規制で格好だけと言わざるを得ません。都には知識人はいないのでしょうか?
この低硫黄化はさらに10ppmまで引き下げられると予想されています。しかし、10ppm以下にするには、精製過程で余分にエネルギーが必要となりCO2の総排出量が増大する可能性もあり環境問題は、車だけでは論じることは出来ないのです。

ディーゼルエンジンの進化

既に欧州ではディーゼルエンジンの新技術が確立され、小型のエンジンでも十分にパワーがあるものが販売されています。多くは、加給気装置と新しい燃料噴射技術(コモンレール)に触媒などの後処理装置を組み合わせ必要に応じEGRを制御パワーと有害排気物質を減少させています。また、ディーゼル車特有の音も非常に小さくなっています。これらの技術が早く国内にも導入されれば、環境にやさしい車としてディーゼル車も国内で増えてくると思います。ディーゼル車の現状のイメージを変える事は簡単ではありません。しかし高い技術を持ったメーカーの製品がそれを実現することでしょう。既にまったくディーゼル車に無縁であった富士重工やホンダもディーゼルエンジンの開発に着手しています。もちろん当初は数年(4〜6年)の欧州マーケット向けですが。多分今年の夏以降ディーゼル・NOx法を満足させたディーゼル車が現在ディーゼル車を販売中のメーカーから続々出てくるものと思われます。

新規代替燃料

軽油の代替燃料で非常に注目すべき燃料が現在国家プロジェクトで進行中です。DME(ジメチルエーテル)で天然ガスから造られ現状のディーゼルエンジンでもこの燃料を使用すると一切黒鉛などを排出しません。燃料ポンプの磨耗などいくつかの問題点はありますが非常に有望な新規代替燃料です。(詳しくはDMEの項を参照ください。) また、天然ガスを触媒などを用いてガソリンや軽油などの液体燃料に変えたGTL(Gas to Liquid)も有望な軽油やガソリンの代替燃料です。硫黄分を一切含まず、また夫々のエンジン特性に合わせた燃料を作ることも技術的に可能になって来ています。現状はそのコストが一番の問題点です。

軽油に求められる性能

軽油の質も上記のように変化していますが、現在の軽油の組成もメーカー毎(細かく言えば精油所毎)に少しずつ異なっています。ガソリンと同じく基材(原油を精製していく段階で、同じような成分毎に分けたもの)をブレンドして造られています。この時、原油の組成・精製装置の違いや能力により、微妙な差が出てくるわけです。また、季節や地域によってもその組成を意識的に変更しています。つまり軽油もガソリンと同じ、ミネラルウォーターの味が微妙に違うように、まったく同じではありません。しかし、軽油に関して言えばメーカー間の違いはガソリンほどは無いようです。軽油自体バーターが頻繁に行われている為、その差を見つけることかなり困難と言えるでしょう。
 
 さて、その軽油に求められる性能を具体的に上げると、

等が主なものです。実際の使用においては低温流動性とセタン価および潤滑性が重要です。また、ガソリンはオクタン価と蒸気圧などで分類されますが軽油はJIS規格によって、主に目詰まり点や流動点の違いにより、特1号から1、2、3、特3号までの5種類に分類されています。北海道など寒冷地の冬季用である特3号軽油の流動点は「-30℃以下」。この特3号を暖かい地域で夏場に使用すると、「低温流動性」には問題ありません。しかし燃料噴射装置の潤滑性に関係する潤滑性向上剤の量を十分添加されていない場合、トラブルを起こす可能性があります。まして、低硫黄灯油等を使用している一般公道を走っていない車両などでは、潤滑性不足を引き起こす事は確実です。

プレミアム軽油はそんなに違うの?

ガソリンと同様軽油にプレミアム軽油が一部の石油元売から販売されている地域があります。その違いは、清浄剤とセタン価で清浄効果によりインジェクターの汚れを取り除く効果が期待できます。また同時にセタン価が3程度高くなっているため、エンジンの始動性が良くなり暖気も早くエンジン音も低く抑えられる特徴を持っているはずです。しかしプレミアム軽油を一回入れた程度では変化を感じるにやや性能不足と思います。価格差に見合った性能差を出すにはもう一息、でも使用したほうが車と環境にはいいといえます。これは、どのディーゼルエンジン車にも当てはまります。 

潤滑性向上剤とピストンリングの腐食

全ての軽油には燃料噴射ポンプの磨耗を防ぐ為、潤滑性向上剤が添加されています。この添加剤はGMO(グリセロールモモノオレイト)等のエステル系と脂肪酸系の2種類あります。現在国内で使用されている物は4銘柄です。脂肪酸系は、潤滑性能が高く添加量が少なくてすみます。しかし酸であることにはかわりはありませんので防錆剤の選択が重要です。石油元売が使用している中にはこの防錆剤を適切に使用していない低価格だけが理由の脂肪酸タイプも見受けられます。また、燃料中に微量ですが硫黄を含んでいる軽油を使用している限り、燃焼ガス中には硫酸が生成されてしまいます。この硫酸からの腐食を防ぐ為(防錆剤を使用する本来の目的)にも、防錆剤は不可欠で、GMOタイプにも防錆剤の使用が望ましいのです。しかし現在は使用されておらず、性能的に満足できる潤滑性向上剤は、脂肪酸系の2銘柄だけです。価格だけで防錆剤が適切に使用されていない添加剤を選択している石油会社は、技術を謳う外資系としては、この選択はいかがなものかとも思います。しかし重大な問題を起こすほどのことはないので多くは語らないことにします。

添加剤とデポジット

軽油の場合常にプレミアム軽油を入れる事は、プレミアム軽油はどのスタンドでも販売されていないため不可能です。この為、ディーゼルは長年使用しているうちに、インジェクターが汚れてしまい、始動性・燃費・加速・パワーが少しずつですが悪化しひどい場合にはスタート時や加速時に黒鉛を撒き散らすようになってしまいます。常にディーゼルエンジンの優れた性能を引き出すため、オイルを交換するのと同じようにせめて5千Km毎添加剤を使用しエンジンをリフレッシュする習慣をつける事をお勧めします。何時でも愛車のディーゼルエンジン性能が遺憾なく発揮させてあげましょう。


まとめ

最後に石油元売各社にとっては、低硫黄軽油に潤滑性向上剤を添加しなければならないことは、低硫黄軽油を製造する設備等の出費が大きい上、更なる出費を強いられるダブルパンチとなっています。価格を簡単に上げられない軽油、環境の為必要な事とは言え、自動車メーカーへの負担が少なすぎるのではないでしょうか?500ppmの低硫黄軽油が発売になっても、それ相応のディーゼル車を販売しているところは僅かで、50ppmの軽油が販売されるまで新技術の投入をしてこないのは環境のことを考えるといかがなものかと思います。<日本市場は、ディーゼル車の人気がないのでそんな投資は出来ない>との声も聞きます。しかし、欧州車並みの性能を持たなければ魅力も半減です。ガソリン車では、世界のトップレベルの技術を持ち、輸入車を乗る意味が薄れ始めた今日この頃です。
OEMさん、日本の将来を考え、Buy Japan(日本製品を買おう)と言わせる良い製品を早く出してください。ハイブリット車で世界を唸らせた日本の技術はこの分野にももっとスピーディーに力を発揮ししてほしいものです。


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