レスキューGDI  

最新ガソリン直噴技術

 トヨタの初期型D4も当初GDIに似た現象が見られていました。 しかし、販売当初、D4の販売台数は月間1000台程度で、問題を解決しながら改良していった形跡があります。 つまり、トヨタは実走行で見つかった問題を解決しながら販売台数を増やした為、問題が大きくならなかったのではないかと思います。 慎重なトヨタがまるでホンダ式の改良を行う事は異例です。 直噴ガソリンエンジンを実用化の段階に入っていた時期に、三菱に先を越された為の焦りと、直噴ガソリンエンジンの先行開発者だと信じていたプライドから直噴ガソリンエンジンは、三菱オリジナル技術と思われたくなかったのでしょう。



 さて、D4の特徴は、GDIと異なり吸気を通常エンジンと同じシリンダーの円周方向に旋回させています。 この点が、トヨタの先見性かもしれません。 直噴ガソリンエンジンの研究段階では、どのメーカーも設計のポイントとして、噴射したガソリンでシリンダー壁のエンジンオイル(潤滑皮膜)が洗い去られ、シリンダー壁の摩耗やピストンリングの摩耗するのではないかと懸念していました。 そこで縦に吸気を旋回させることで、ガソリンがシリンダー壁につかないようにしたのがGDI式と言えなくもありません。(主な理由はこれ以外にも多々あります。) しかし、トヨタは、吸気管やバルブ配置が複雑となる事、燃焼室形状が複雑になり理想燃焼室形状にならない事を理由に、タンブンフローを使用せず その代わりより高圧な燃料噴射システムと組み合わせて対処しました。 それでも他社と同様、噴射されたガソリンが吸気の旋回流に乗って点火可能な濃度の混合気となり、圧縮行程中点火プラグに運ばれるシステムを採用していました。 (このあたりを良く研究したと見えて、後発の日産は通常燃焼では、GDIのタンブル式を、希薄燃焼はトヨタ式を採用しています。) この為D4もノズルが汚れてくるとGDI同じような現象が初期モデルで発生していました。 同時にシリンダー壁の磨耗の問題もあったようです。 
 そこでこの吸気流に混合気を乗せるシステムをやめ、吸気旋回流を利用せず、気化した混合気が圧縮行程だけで点火プラグに集まっていくシステムに改めています。 この時トヨタは、根本から燃料直噴の概念を見直しています。 1999年に発表された第2世代D4の燃料噴射ノズルからは、通常の円錐型ではなく、扇子のような扇形にガソリンを噴射させているからです。 ガソリンは噴射ノズルから噴射されると一瞬にして気化するのではなく、吸気とガソリン微粒子の間で熱交換がなされて気化しています。 そこに注目したのでしょう。 吸気工程ではスワール式噴射ノズルはガソリンが円錐状に噴射される角度も大きく優位性を持つ反面、圧縮工程においては、円錐の角度が縮まり円錐の中心軸に近くなるほど空気に触れる時間が遅れてしまいます。 扇形に噴射された場合には立体型の円錐に対し平面に近く熱交換はよりすばやく行われると同時に噴射されたガソリンの慣性力で大きく空気を巻き込み、気化する時間がより短くより均等に気化します。 この新しい噴射ノズルは、希薄燃焼時には、過剰ガソリン濃度域や燃焼しにくい超希薄濃度域が少なくなり、均一な混合気を生成し易くなります。 さらにピストン上部に貝型の凹みを設けて、噴射角をかなり下向き(45度前後か?)に行っています。これらにより、噴射されたガソリンは、空気を巻き込むようにして圧縮されながら点火プラグに運ばれます。 この為、速い速度の吸気流は必要なくなり、ポンピングロスを生むスワール弁や希薄燃焼用の細い吸気ダクトなどが必要なくなっています。 同時に、吸気流によるシリンダー壁の熱を奪う事も少なくより高効率のエンジンになっています。 また、この噴射システムはいかなる燃焼に対して優位性を持ちパワー・燃費・排ガス全てにプラスに働きます。 この結果、ピストンヘッドの汚れによるエンジンの経年変化を小さくし・ガソリン過剰濃度域も最小に抑える事が可能となり、黒煙も減少する優れた特徴を発揮でき、成層燃焼域をより広げられ、その結果燃費も向上しています。 
 高温にさらされる噴射ノズルの汚れには無防備ではありますが、それでもスワール式噴射ノズルより汚れによる影響が少ないともいえます。 

 GDIも希薄燃焼時にコンパクト噴射(短時間に少量噴射する。)していると言っていますが形状は円錐型であることには変わりありません。 この為どの燃焼時でも気化し易い扇型に比較し、希薄燃焼から通常燃焼に移る時など、不均一な混合域ができやすく黒煙を排出してしまいます。 (日産は、この点を注目し同じ円錐型のスワール式噴射でもシリンダー上面に対しノズルが傾いていることから、円錐の頂点から先端までの距離が異なる為、円錐型でも均一に噴射しては、混合気が不均一になる為、わざと噴霧を不均一としています。このような工夫は、後発の強みかも知れません。) レギュラーでもエンジンの圧縮比を高める事ができるガソリン直噴エンジンの特徴を生かすには、レギュラー指定にし、5000Km毎に添加剤を入れる事をユーザーに理解してもらう事の方が、ハイオク指定の車にするよりランニングコストが安くユーザーには喜ばれるはずです。 

エンジン内部の汚れ‐‐‐その原因物質